現代の私たちの生活の中でも、木材は身近なところでたくさん使われています。日本の建築文化の中の長い歴史と経験の中で受け継がれた木の特性を生かす技術が、安全な住宅環境をつくり出しているのです。
 今でも木の特性をもっと引き出し、日常生活に役立てるため、木材の新しい利用方法の研究が進められています。

いざという時の衝撃をやわらげる木材

 転んだ時、床に頭や顔をぶつけた。そんな経験がある方は多いのではないでしょうか。その時、頭が地面や床に叩きつけられるスピードはなんと秒速4~6m、その最大衝撃力は200kgfにもおよぶといいます。なんと大きなお相撲さんの体重と同じくらいの衝撃になります。木材は、衝撃吸収力が他の素材よりもあり、床材に適した安全な素材ということができます。

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転倒時に頭に受ける衝撃力は200kg以上

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  材料で違う衝撃吸収率
資料:宇野英隆「建築アラカルト」鹿島出版会,1986

問題は火災が起きたとき、いかに被害を最小限にくい止めるか

 木材は断面が厚くなれば熱が中まで伝わらず燃えてしまうまで時間がかかります。鉄は、薄くて強い代わりに火や熱によって短時間で温度が上がり変形してしまいます。木造住宅が「火に強い」といわれるのは、大きい断面を持った木材になると、表面に着火しても、表層に炭化層ができ、それが断熱層の役割を果たし空気を遮断し、燃焼の進行は遅くなりるからです。燃えても中心部までは燃焼が進行せずある程度の強度を保ち、短時間で崩れることが少ないといえます。いざという時、避難時間や消火活動の時間が得られると考えられます。

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鉄・アルミニウム・木材の加熱による強度の変化

 資料:Thompson,H、E,F;P,j.,vol8.の4,1968

 

夏涼しく冬暖かい快適空間をつくります 

 コンクリート造は冬暖かいのですが夏は外気温と同じ室温になってしまいます。木造住宅は外気温と比較した時、夏涼しく冬温かいということになります。また私たちが感じる「暑さ」や「寒さ」は温度だけではありません。湿度も体感温度に影響しています。その湿度を適度に調節する木材の調湿性も、毎日快適に過ごすためには欠かせません。
 日本の気候を考えると、夏涼しく冬温かい住宅が理想的です。木材の持つ断熱性と調湿性をうまく使うことが快適住空間の実現につながることでしょう。。

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 外気温と室内温度の変化
鉄筋コンクリート造住宅と木造住宅の一年間の気温の変化

 資料:山田正編「木室環境の科学」海青社,1987

 

 

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 住宅内の湿度変化

資料:則元 京 他 木材研究資料 No.11,1977

 

 

 地震にも安心 木材は粘り強い材料

wood_201503_5-6 日本の「木の家」は一般的な工法で在来工法ともいわれています。この工法は、柱や梁、小屋梁、桁材などに比較的太い木材を使用し、構造上必要な壁をつくります。
 品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律、平成12年施行)の施行以降、新たに耐震等級というグレードが設けられました。実大実験などにおいてこれまで解明できなかった問題などの実証的な研究がなされて木の家の耐震性、安全性が確認されています。

 同じ重さの鉄と木の強さを比べると、スギ材でいうと、圧縮の強さは鉄の約2倍、引っ張りの強さは、約4倍もあります。
 地震によって建物が受ける地震力(振動エネルギー)は、建物の重さに比例するので、日本のような地震の多い国では、軽くて、強い木材で家を作ることが適しています。

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建築材料の比重、強度、および比強度

資料:木と日本の住まい「(財)日本住宅・木材技術センター」

 

 

 

 

 

 参考:社団法人全国木材組合連合会ホームページ