木材は身近にある素材で、重量あたりの強度が高く、加工性に富むことから建築の主要材料として利用されてきました。この木材の新たな役割がクローズアップされてきました。木材製品がもつ炭素のストック機能は、木材の利用によって地球温暖化防止の効果をさらに高めます。

大気中の二酸化炭素が年々増加しています

wood_201503_7-1 地球温暖化とは、大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度が高まり、地球の気温が上昇するという現象です。
 産業革命以降、石油や石炭などの化石燃料の使用が増加した結果、地球上の温室効果ガス濃度が急速に高まり、現在地球温暖化問題は深刻化しています。

 

 

 

 

森林は二酸化炭素を吸収して蓄えます

 樹木は光合成により、大気中から吸収した二酸化炭素と根から吸い上げた水を原料として、太陽エネルギーと葉緑素の働きで糖をつくり酸素を放出します。糖は様々な化学変化を起こし、樹木を構成する主な成分に変化し、細胞壁となって樹木の中にため込まれていきます。
 右図は森林(天然林)の成長段階に応じた炭素貯蔵量と年間の炭素固定量をモデル的に示したものです。
 木が若いうちは、成長量が旺盛となるので年間炭素固定量と貯蔵量がともに上昇していきます。しかし、ある年齢になると成長量が衰えるため、年間炭素固定量は減少していきます。また、炭素貯蔵量も木が成熟した時最高となり、それ以降の変化はほとんどありません。
 このため、人工林では、成熟期を終える頃伐採して木材として活用することが、非常に重要となります。
 木を伐採し、木材として活かしていくことは、地球温暖化対策という意味からも非常に大事な取り組みといえます。

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木材、木造住宅は炭素の貯蔵庫です

 樹木は、伐採され、木材として加工されたあとも、炭素を木材の中に蓄えています。例えば、10.5cm角で長さが3mの柱では、約7.5kgの炭素を貯蔵しているとされています。
 我が国の平均的な木造住宅では、木材を約24m3使用していますから、蓄えられている炭素の量は約6トンとなります。これは、鉄骨プレハブや鉄筋コンクリート住宅の約4倍に相当します。
 一方で資材製造過程における炭素排出量は、木造住宅はこれらの3分の1、4分の1ほどです。
 このように、木造住宅を推進し、木材を活用したまちづくりを行うことは、まちに第二の森林を作ることと同じ働きが期待されるのです。

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一戸あたりの炭素貯蔵量と資材製造時の炭素放出量

資料:岡崎泰男・大熊幹章「炭素ストック、CO2放出の観点から見た木造住宅建設の評価」『木材工業53(4)』(1998)

 

木材は再生可能な循環型資源です

 林地に植栽された樹木は、大気中から取り込んだ二酸化炭素を固定し、成長とともに固定量を増加させていきます。
 伐採後、加工されて製材品となった木材は住宅の部材として使われますが、このとき炭素はそのまま木材の中に蓄えられます。
 ある年数が経つと、住宅は解体されますが、解体材の一部は、パーティクルボードなどに再利用されます。また、廃棄された木材は二酸化炭素として大気中に放出されますが、新たに植栽された樹木に再び吸収・固定されるため、二酸化炭素の増加を推進することはありません。
 このように木材は再生可能な循環型資源といえます。
 森林を増やし、これを正しく管理して、森林から産み出された木材を有効活用していくこと。そして、伐採したのちは、必ず植えるという大原則を守ること。これらのシステムを21世紀の私たちの生活を支えていく基盤とすることを、今こそ真剣に考える必要があるのではないでしょうか。

 1haに植えられたスギ造林木の育成期間及びスギ材利用の全過程における炭素貯蔵量の変化

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資料:大熊幹章,木材工業53-2,1998

 

 次は、さらに詳しく二酸化炭素のストックについて紹介したいと思います。

 

 

参考:社団法人全国木材組合連合会ホームページ